歯科治療総合医療管理料の対象疾患について

1.高血圧性疾患、虚血 性心疾患(心筋梗塞、狭心症)、心不全、不整脈

(1)   高 血圧症:WHO分類基準によれば1期では歯科的処置は可能、2期では普通抜歯ならできる、3期では処置時間を短く、無麻酔処置にとどめるべきである。

(2)   虚 血性疾患では、治療に対する不安を除去し無痛的処置に努める。また、ワーファリン、パナルジンなどの抗凝固剤を服用している場合が多いので、トロンボテス ト60−70%(20%でも可)に保つようにする。とくに、心筋梗塞では、発作後6ヶ月は歯科治療禁忌である。

(3)   心 不全では、慢性患者が対象で、NYHA分類で、I,IIでは歯科治療は可能である。

(4)   不 整脈は非常に多彩な症状を示すため、歯科治療の内容と専門主治医との指示により行い、診療中は心電計を用いることは絶対に必要である。

(5)   低 血圧患者では、麻酔反応で著しい血圧低下を示すことが多い。

以上のごとく、心、循環器疾患患者の歯科治療を円滑に行うためには、常に精神的安静を与 え、不安、恐怖を除き、そのためには鎮静剤投与も必要となる。また、治療中は、血圧測定と心電図、パルスオキシメーター等によりモニタリングを並行して行 うべきである。さらに、降圧剤を服用している患者では、副作用の発現や歯科治療に際して投与する抗菌剤、消炎鎮痛剤との薬物相互作用を考慮しなければなら ない。

2.喘息、慢性気管支炎

  歯科治療中に喘息の発作を誘発しないように努めなければならない。歯科医が普段使用 している鎮痛消炎剤のほとんどすべてのものが、使用上の注意として、喘息患者には慎重投与と記されている。その患者が過去に使用して発作を起こさなかった ものを使用する。

3.糖尿病

歯科観血処置時の一過性菌血症の予防と、処置後の感染予防のための抗菌剤の投与を行うと ともに、いかなる歯科処置であっても空腹時を避けて、食後に処置することを原則とする。

4.甲状腺機能亢進症

  精神的興奮を抑えることを心がける(レセルピン、クロルゼポキシドのような鎮静剤、 およびプロプラロールの術前投与)。抗甲状腺剤による治療を受けている患者では、白血球減少症などの副作用を併発していることがあるので、感染予防に配慮 する。
 特に、メルカゾール等の投与を受けている場合には、主治医との対診は必ず行うべきである。

5.甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモンが不足していると創傷の治癒が遅れるので、甲状腺ホルモンの投与を続け る。下垂体性のものでは副腎皮質機能不全を合併しているので、抜歯などの外科的侵襲を加える場合には、投与中の副腎ホルモンの増量と抗生物質の投与が必要 とされる。

6.てんかん

歯科治療中に発作を起こさせないように予防することと、治療中に発作を起こしたときの対 応が重要である。
主治医より、てんかん発作の型と程度、服用中の薬剤と容量などの情報提供を受け、患者が現在良好にコントロールされているかを確認することが重要である。 歯科治療の前に体調を整えておくよう指導し、治療に対する不安を取り除いておくことが大切である。治療中に発作が起きた場合の処置については、主治医にあ らかじめ指示を仰いでおくこと。

7.自律神経失調症

マイナートランキライザーが投与されている場合が多いので、疼痛の閾値が高く、疼痛反応 が鈍いので、局所麻酔やタービンによる切削時には注意すべきである。
また、投薬に際しては、重複を避けるとともに併合服用による副作用に注意し、主治医に対診すること。

8.脳血管障害

不安の除去と除痛を心がける。脳梗塞、くも膜下出血後の症状の安定ならびに服用中の薬剤 について主治医より情報提供を受けて、歯科治療の必要な範囲について検討すること。

(この資料は、歯界展望、別冊; 成人病のすべて、1991より引用した。)

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