修了生の活動
●HPS在宅支援活動
HPS・保育士 中山陽子
はじめまして。私はHPSの中山陽子です。私が現在取り組んでいる、遊びを使った在宅療養支援について少し説明をさせていただきます。
私が遊びの支援をおこなっているのは、脊髄性筋委縮症(SMA)Ⅰ型という病気を持つ、とてもかわいい女の子、きょうちゃん(3歳)です。SMAという病気は、脊髄の運動神経細胞の変性により筋肉の衰えや筋の委縮が四肢から体幹に広がり、運動機能障害が進行し歩行困難となる病気です。Ⅰ型は、嚥下障害や呼吸困難があるため人工呼吸器をつけることが必要です。でも、きょうちゃんは3歳の子どもらしく、好きと嫌いがはっきりしてきて、お笑い大好きな女の子です。とてもきれいなお母さんと、ちょっとスパルタだけどかっこいいお父さんの愛情を一身に受けて育ったきょうちゃんは、妹ができたので少し背伸びしてお姉さんの意識も芽生えつつあります。
きょうちゃんは現在、看護師、ヘルパー、OT,HPSの支援を受け生活をしています。私はHPSとして2か月に1度程度(1回あたり3時間程)遊びの計画を持って訪問活動を実施しています。遊びの計画を立てるとき注意していることは、きょうちゃんの状態だけでなく、発達に合わせることです。その上で年間の目標を決め、2か月ごとのテーマと具体的な遊びを策定しています。きょうちゃんを訪問する際には、その中からいくつかの遊びを紹介し、きょうちゃんと一緒に遊びます。一番楽しいときです。2か月ごとの訪問のため、ご両親やヘルパーさんに日常的に少しの時間でも、計画の中から遊びを選んで実施してもらっています。また一方的に遊びを決めるのではなく、きょうちゃんに選択肢を与える方法を実践してもらっています。
まだ3回の訪問ですが、ご両親の考えが少し変わってきたように感じています。ご両親はきょうちゃんをとっても大切に育てており、外出も動物園、水族館、公園へと積極的に連れて行っています。しかし、室内の遊びに関しては、テレビやDVDを見せたり、本を読み聞かせたりと限られたものでした。私達が訪問し、遊びを紹介すると「こんなにたくさん遊べることがあるんですか、考えてもみませんでした」と驚いていました。そうなんです。寝ていても、人工呼吸器をつけていても、いくらだって遊べるのです。「そうだよね、カゴメカゴメ楽しかったね、きょうちゃん!」砂遊びをしている時に、モニターの心拍数の数値がかなり下がっていたので、ご両親は「砂遊びは落ち着くんですね」と遊びの持つ力に感心していました。またきょうちゃんが意思表示し易いように介護者が統一した聞き方をするように提案しました。現在はまだ練習中ですが、ご両親はしっかり実行し、コミニケーションの取り方も上手になっています。私は、日頃より、どんな障害を持っている子ども達にも、子どもが出来るだけ能動的に遊べるように考え、子どもが遊びたいと思う遊びは、発想を変え、工夫し、子どもに提供出来るようにする事がHPSとしての役割と考えています。きょうちゃんにも遊びを通してもっともっと3歳児としての楽しい経験をしてほしいと思っています。
今後は看護師、ヘルパー、OT、ボランティアの方とも連携をとりながら、きょうちゃんとご両親を中心とした活動を展開していきたいと思っています。なにより、遊びを求めている子どもや家族にHPSの専門性を発揮できる喜びを感じています。今後もこのような在宅療養する子どもさんへの支援を続けていきます。応援よろしくお願いします。