遊びは私達の生活を豊かにするだけでなく、子どもが成長発達する上でも必要な活動である。それは病児・障害児においても例外ではないが、医療や福祉の場では遊びの存在が時として軽視され、良質な遊びを提供する機会が得られないこともある。
HPSの更なる発展を目指して開催された国際セミナー&ワークショップでは、病児・障害児の「遊びによる育み」遊育支援の視点から、入院や治療、手術に関わる子どもの負担軽減のためのプログラムが展開された。当日は開催期間が1日であったにも関わらず、全国各地より約140名の参加者があり、セミナーやワークショップ担当講師との間で積極的な意見交換が行われた。
また、当該セミナー&ワークショップの目的は、これまでのホスピタル・プレイ実践研究成果を踏まえ、社会全体で子どもの遊ぶ力を引き出す支援のあり方を提案することであった。HPS講師によるワークショップでは、医療関係者からホスピタル・プレイに対する実践的な評価や助言が得られた結果、Playの力と価値が再考された。
さらに、福祉や医療に関心を持つ一般参加者も多数に上り、遊びの力を効果的に引き出す方法論などを通して、「遊びによる育み」支援への理解にも繋がった。
◆平成25年2月2日(土)
本講演は、「継続的に治療を行う必要のある子どもに対する遊び支援」をテーマとし、キャロライン氏の英国における経験を踏まえながら、最新の知見を引用して「遊び」の価値と可能性が言及された。
子どもと関わるとき、遊びは全ての中心にある。本講演では、総合病院、救急、訪問サービス、歯科など様々な領域における「家族支援」「長期入院児への遊び支援」「日常の遊び」の成果を中心に、HPSに求められる知識・態度・技術が教授された。
また、思春期の子どもとの関わり方に着目し、遊びによる交流と支援、そしてコミュニケーション方法について、具体的な慢性疾患の事例を交えながら解説された。
本講演は、「痛みの軽減とガイドイメージ法」をテーマとし、子どもに対する痛みの対処の知識やスキル向上に興味を持つ医療者のニーズを満たすことを目的に、英国における最新の知見が紹介された。
講演ではまず、子どもの知覚・認知から痛みを捉え直すとともに、痛みの緩和方法に着目したガイドイメージ法の解説があった。さらに、子どもが病院で経験する痛みは、子どもの気持ちと強く結び付くとして、痛みと恐怖についての心理学的及び神経生理学的な理解から、痛みの対処に関する薬理学的アプローチと共に用いることができる介入として、呼吸法、リラクゼーション及びイメージ療法の用い方が紹介された。
本学HPS養成講座は、現在まで8クールが実施されている。養成講座修了後、HPSはこれまでにどのような活動を行ってきたのか。HPSによる日本のホスピタル・プレイ活動を紹介しつつ、ワークショップを通して、参加者は子どもにやさしい医療を実現するための活動を体験的に学んだ。
当日の内容及びHPS講師は、写真のとおりであった。なお各ブースでは、専門的な遊び(Play)の力を体験的に捉えられるように、HPS講師による解説を織り交ぜながら、参加者が実際の玩具を制作したり、子どもの視点に基づく遊び体験が実施された。
HPSの価値と遊びの力を社会に発信する上で、本セミナー&ワークショップは非常に有益な機会となりました。本日は、(1)「子どもにやさしい医療を提供する必要性」をテーマに、遺伝及び行動、そして環境要因の機能的な役割に着目した原崎正士氏による基調講演、(2)Bernie氏による英国最新の知見に基づくガイドイメージ法の解説、(3)Caroline氏によるHPS実践技術と知識の紹介、そして(4)日本のHPSによるホスピタル・プレイの解説と体験型セッションが行われました。
本学では、昨年度までに文部科学省大学教育推進プログラム「体系的なHPS養成教育プログラムの開発」が終了し、その中で日本の教育文化・環境に則したHPS教育プログラムを完成させました。さらに当該取組成果は、日本学術振興会より特に優れており波及効果がある取組として認定され、本学HPS教育研究事業の成果に対する期待の高まりを伺うことも出来ました。
本会冒頭では遊育支援という概念が提唱されましたが、各プログラムを通じて遊びの奥深さや発展可能性を再認識することができ、さらには子ども支援における新たな学問の確立を目指す必要性も明らかになったのではないかと考えています。
最後に、本日の参加者各位に対して感謝が述べられ、引き続き本学HPS教育研究事業に対する支援と協力をお願いして閉会した。
当日の様子
開会挨拶
静岡県立大学短期大学部学長
木苗 直秀
基調講演
静岡県立総合病院小児科主任医長
原崎 正士
講演Ⅰ 講演Ⅱ
上級HPS, Team Manager
Top-Down Pain Control
Caroline Fawcett Bernie Whitaker
HPSワークショップ
閉会挨拶
静岡県立大学短期大学部部長
田中丸 治宣